アクティブラーニングについて、それほど今と変わらないと思う僕の考え

こんにちはyukioです。

2020年の大学入試改革に合わせた形で、小学校、中学校の新しい学習指導要領(=文部科学省が定める学校教育に関する基本方針。約10年おきに改訂されている)も2020年度から順次実施されていきます。
→こちらの記事もどうぞ~一体何が変わる?2020年大学入試改革まとめ~暫定版~

今回は、その新学習指導要領の中でも、一番の話題となっているアクティブラーニング(以下AL)について、AL導入の目的や、ALに必要な力、そして今後の教育がどう変わっていくのかなど、そのあたりの僕の考えをお話させていただこうと思います。

先に結論から言ってしまうと、


それって今までとそれほど変わらないんじゃない?


です。
では、一体なぜ僕がこのような結論に至ったのかも含めてご覧いただければと思います。


そもそもアクティブラーニングって何なの?

AL自体は特に新しい考えかたという訳ではありません。現在の小学校、中学校の授業の中でも、総合的な学習の時間などで、既存の学校での授業の形態にとらわれない授業、という形で実施されています。

もともとは大学教育の内容について言及する際にこの”アクティブラーニング”という言葉が使われていましたが、2020年以降の新学習指導要領にて、小中高の学校教育内容にこのALが導入されるとのことで、2015年ごろからにわかに注目が集まっていました。

そもそもAL自体に、これと決まった定義はありません。捉え方は様々だと思います。色々な情報を調べてみても、学習者が主体的に、能動的に学ぶ学習の仕方的なことが書かれています。う~ん、抽象的です。

そこで、このALを僕なりの解釈で言わせていただくと、
「学校教育のやり方を、先生中心の講義形式から、生徒中心の自由なやり方に変えましょう」
ということではないでしょうか?もちろん全部の授業がそうなるとは思いませんが。


アクティブラーニング導入の目的とは?


学習指導要領では、学習内容に関して「何を(what)」「どのように(how)」学ぶか、という点について言及されています。今までは「何を」について注目が集まることが多かったのですが、次期指導要領では、そこから更に深い学習につなげるため、「どのように」学ぶかという点について言及された形になります。

では一体なぜこのALを導入することになったのでしょうか。

それはおそらく2012年の中教審(中央教育審議会=教育に関する有識者が集まって、文部科学大臣に国の教育の方針に関してアドバイスをする機関)がきっかけです。このときの中教審の答申は、大学教育のあり方が問題視され、よく言われる日本の大学生は勉強をしない、世界で通用する優秀な人材を排出できていない、という問題に対して、切り込んだ内容でした。そして、大学教育をよりALの方へ転換していくように求めています。

2020年の大学入試改革も無関係ではありません。大学教育でより世界に通用する人材を育成するためには、大学入試自体の質を変える必要があります。英語の4技能必修は、まさしくその目的のためでしょう。

大学教育のあり方を変える、そのために、大学入試を変える、そして、そのために、小中高の学校教育のあり方を変える、と捉えると今回のALが一体どういうものかなんとなく見えてきませんか。

アクティブラーニングの土台となる力


中教審によると、小中高校生のALを「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」と位置づけています。実際の授業に関して具体的にイメージしにくい方は、学校で5~6人のグループをつくり、先生から出された課題について、グループの中で議論しながら、問題点やその解決方法についてを模索していく、そのような授業だとお考え下さい。


ALはノートに問題を解いていくような学習と比べると、より高度な学習方法となります。それは、課題発見のための観察力や、友達と一緒に考えるための協調性、言語能力、更に、出てきた意見をまとめるための調整能力などなど、様々な能力を要求されるという点からも明らかです。

また、ALが今までの学習方法と異なるのは、学習者にとって大きなアウトプットを要求する点です。学校教育の場で実際にどのようなAL授業が行われるかは定かではありませんが、僕のイメージのままであれば、ALはインプットではなくアウトプット的学習です。

当然ですが、アウトプットを行うためには、それ相応のインプットも必要になります。必要な知識を覚えないままテストや問題演習ばかりしても点数は上がりっこないですよね。それと同様に、“きちんとした“ALを行うためには、質的にも量的にも向上したインプット、つまり基礎的な知識の定着を行う必要があります。


基礎学力の備わっていないアクティブラーニングは失敗する


ALを実施する上で、基礎的な知識の定着が必要であることは確認しました。ではもしも、その基礎的な知識の定着がないままALを行えば一体どのようなことが起こるのでしょうか。

その答えこそ、先程上でもお話した、2012年の中教審の答申に繋がると思います。かつて、(と言っても最近ですが)ゆとり教育が行われ、その世代の学力が大きく下がったと言われています。ゆとり教育の名のもとに、小中高校の教育課程は大きく削減されました。

そのため大学側は入学生に対して、基礎学力をつけさせるため、高校レベル、更には中学レベルにまで遡り、講義を行ったところもあるようです。そのような環境の中で、果たしてどれだけの大学が、アカデミックレベルのALを行うことができたのでしょうか。

ここで断言したいと思いますが、小中高校におけるALは、クラス全員が、学習基礎力をある水準までしっかりと身につけておかないと、間違いなく失敗します。


義務教育では基礎力をつけることが最優先事項


ただ、このようなことは、僕に言われるまでもなく、教育の専門家であれば分かっていると思いますし、文部科学省がそこまで考えていないことはありえません。(と信じたいです。)

おそらく基礎学力の定着に関しては、ポストゆとりの現役世代の保護者の方であれば、かなり力を入れているように感じていると思います。僕もよく面談で、今の小学生中学生の内容ってこんなに難しいんですね、とよく保護者のかたに言われます。

現在のその流れというのは引き続き継承されるのではないでしょうか。ALの導入で、学び方に多様性を設けつつも、確かな学力を保証するために、基礎学力の向上を目指す。はっきり言ってお子さんたちは大変ですが、それが理想的な流れなのかな、と思います。

実際の授業配分に関しても、今まで同様に教科書を用いて、先生が説明を行い、知識を覚えていく、という形は残り、問題演習や発表時間の代わりにAL形式の授業を行い子どもたちの知識の定着度合いを測る、という形になるはずです。


アクティブラーニングの導入によって日本の教育はどう変わるか


これまで色々と述べさせていただきましたが、僕自身の意見はというと、AL実施に関しては多いに賛成です。これは僕自身が子どもと接していて感じることですが、知識以上に、勉強に対する意欲や好奇心を持てていない子が多いように感じます。

勉強は確かにつらいですが、何かを学ぶということはそれ以上に楽しい、喜ばしいことです。せめて目の前の子どもたちだけでも、このことを伝えたいと思っていますが、ALを通してたくさんの子どもたちがそのように感じてくれれば、もっと嬉しいです。

ALの導入によって教育環境の変化が叫ばれていますが、僕自身は教育の本質は変わらないと思います。まず小中の義務教育段階では、今まで同様に、基礎学力の定着が最優先となるはずです。ですので、この記事の最初に言わせていただきました結論の通り、今までの学習の方向性が大きく変わることはないです。

新たな学習方法により、子どもたちの学びへの意識が大きく向上することを期待しつつ、今はしっかりと基礎学力を定着させることが、大切です。