前回の原稿用紙の書き方に引き続き、今回からは文章の書き方のお話です。
小中学生の作文といえば、夏休みに書く読書感想文が有名ですが、それ以外にも税の作文や、人権作文などがありますよね。テーマが難しくて何を書けばいいか分からないのも問題ですが、それ以上に子どもたちを悩ませているのが、原稿用紙3枚以上とか、5枚以上などという文字数制限です。
文章を書き慣れている大人にとっては大したことのない量ですが、小中学生にとってはこの3枚とか5枚って本当に大変なのです。書きたいことを書ききったにも関わらず、まだ原稿用紙2枚目が終わったところだよ~、残り1枚何書けばいいんだよ~、という経験は少なからず誰にでもありますよね。
という訳で今回は、作文の文字数をかせぐために必要なことを、単なるテクニックではなく、正しい文章の書き方という形で身に着けてもらおうと思います。
作文の文字数をかせぐために必要なこと
はじめに、文字数が足りない人の文章に足りないものを確認しておきましょう。
それはずばり、「情報量」です!
あれこれ言うよりも見てもらった方が早いですね、以下の2つの例文を見比べてみてください。
A:私はパンを食べました。
B:私は今日の昼休みに、教室で、友人のミカさんとサチコさんと一緒に、コロッケパンを食べました。
AとBはどちらもパンを食べたという文章ですが、Bの方が詳しく内容が書かれていて、長い文章です。実際の作文では、Aのような文章を書く人は少ないかもしれません。しかし、小中学生が書く文章はまだまだ内容が不足していて、伝えたいことがきちんと伝わらない文章を書いていることが多いです。
相手に伝わる文章を書くためには、文法や言葉の用法が正しいことも大切ですが、「情報量」を十分に補ってあげることも大切な作業なのです。そしてきちんとした情報量が備わった文章は、当然ですが文章自体も長くなりますので、意図せずとも文字数をかせげるようになります。文章を書き慣れている大人にとって、原稿用紙数枚が大した量でないというのは、これが大きな理由です。
文章のキホンを確認しよう
とは言え、ただただ長い文章を書けばいいということでもありません。まずは、正しい文章の書き方を身に着けることが大切です。
日本語の文章を書く場合にその基礎とされるのは、
主語 + 述語
という組み合わせです。最低限、この主語と述語さえあれば文章は完成します。
例文:彼は笑います。
この文章も、最低限の主語と述語の組み合わせの文章です。逆にどれだけ長い文章でも、主語、述語がない文章は不完全な文章となりますので、作文では書かない方が良いです。
(もちろん例外的に主語、述語がない文章をわざと書く場合はあります。)
主語、述語のそれぞれの意味については、教科書や学校の授業を参考にしてみてください。
必要な情報量の基本は5W1H
では、上で確認した 主語 + 述語 の文章に、適切な情報を付け足していきましょう。
相手にものを伝える場合に、必要な情報の基本は5W1Hと言われています。中学校の英語で学習する内容ですね。
念のため確認しておきましょう。
When いつ
Where どこで
Who だれが
What なにを
Why なぜ
How どのように
これが5W1Hです。Wから始まる疑問詞が5種類と、Howという疑問詞の計6つです。自分の文章に情報を補ってあげる場合に、何を付け足せばよいかは、まずこの5W1Hの中から探してあげると効率が良いです。
ではためしに、先ほどの例文に5W1Hを参考に情報を付け足してあげましょう。
毎晩ストレス解消のために、彼は自分の部屋でyoutubeの動画を観ながら、ゲラゲラと笑います。
どうでしょうか?彼は笑います。だけでは分からなかった彼の様子が、こうすると良く分かるようになりました。
When いつ →毎晩
Where どこで →自分の部屋で
Who だれが →(彼は)※これは元からありましたね
What なにを →youtubeの動画を(観ながら)
Why なぜ →ストレス解消のために
How どのように →ゲラゲラと
このように5W1Hの情報を付け足すだけで一気に相手に伝わりやすい文章になりました。
ちなみに文字数ですが、
彼は笑います。→7文字(句点込み)
毎晩ストレス解消のために、彼は自分の部屋でyoutubeの動画を観ながら、ゲラゲラと笑います。→47文字(句読点込み+アルファベットも1文字計算)
どうでしょうか、7文字から47文字に大増量です。これで情報量だけでなく、文字数も一気に増えました。
実際に短い文章を書いてみよう
習うより慣れろ、ということで実際に5W1Hを意識しながら文章を書いてみましょう。
お題の写真を基に短い文章を作ってみます。写真だけでは読み取れない部分もありますので、そこは想像力を働かせてみてください。
When いつ →ある日曜日の午後
ある日曜日の午後、若い女の人が空から自撮り写真を取るために、湖のほとりでドローンを飛ばしてカメラ目線で笑顔になっています。
お題の写真を基に短い文章を作ってみます。写真だけでは読み取れない部分もありますので、そこは想像力を働かせてみてください。
When いつ →今日の昼間
Where どこで →リビングルームで
Who だれが →赤ちゃんが
What なにを →パソコン画面を
Why なぜ →悲しい動画を見て
How どのように →泣きそうな表情で
How どのように →泣きそうな表情で
今日の昼間リビングルームで、悲しい動画を見た赤ちゃんが、泣きそうな表情でパソコン画面を見ています。
When いつ →ある日曜日の午後
Where どこで →湖のほとりで
Who だれが →若い女の人が
What なにを →ドローンを
Why なぜ →空から自撮り写真を取るために
How どのように →カメラ目線で
How どのように →カメラ目線で
ある日曜日の午後、若い女の人が空から自撮り写真を取るために、湖のほとりでドローンを飛ばしてカメラ目線で笑顔になっています。
When いつ →平日の朝
Where どこで →公園のベンチで
Who だれが →小太りの男性が
What なにを →顔を
Why なぜ →仕事で大きな失敗をしてしまい
How どのように →悲しみを隠すように
How どのように →悲しみを隠すように
仕事で大きな失敗をしてしまったこの小太りの男性は、平日の朝から公園のベンチで悲しみを隠すように顔を押さえています。
どうでしょうか?上の例は5W1Hを全て入れようとして少し強引な文章になってしまった印象ですが(汗)、情報量を増やすにはこの5W1Hを意識して足りないものを追加するという形が有効です。作文の文字数が足りないという方はぜひ活用してみてください。